こんにちは、長井 達也です。
今回は、美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院の用途地域・建築基準法・消防法ガイド!について詳しく解説いたしますね。
新規出店の際に理想的な賃貸物件(貸店舗)を出会えても、契約段階で出店を断念せざるを得ないことは、実はよくある話です。
この”断念する理由”として、貸主の意向、保健所の営業許可、建築基準法・消防法・建物側等の問題が挙げられます。
この「断念する理由」として、貸主の意向、保健所の営業許可、建築基準法や消防法、建物設備のスペック(電気・給排水・ガス・採光など)が挙げられます。
そのため、物件を探す際には「用途地域の制限は?」「建築基準法の制限は?」「消防署の届け出は?」といった不安や疑問が多くあるとおもいます。
一級建築士を抱える設計会社さんに内装依頼していれば、ほとんどお任せで対応してくれると思います。
しかし店舗内装業者(小規模な工務店など)に内装を依頼した場合、一級建築士の資格も不要なので、あまり法律に詳しくない場合も多くあります。
また、美容室やマツエク、鍼灸院、整骨院などは「構造設備基準」と呼ばれる設備や面積の仕様を満たさないと、保健所の許可が下りません。
そこで今回は、新規出店時に物件選びで失敗しないために、
- 店舗物件を開業時の各種制限
- 店舗物件を開業時の用途地域まとめ
- 店舗物件を開業時の建築基準法まとめ
- 店舗物件を開業時の消防法・消防設備まとめ
について、詳しく解説していきます。
賃貸借契約の制限
まずは美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院などの店舗を開業する場合、賃貸借契約の条件確認が必要です。
例えば、貸店舗を内覧し理想的な物件に出会えても、契約申込みを行った後に貸主の意向で出店を断われるというケースはよくあります。
注意ポイント
・業種NG
・同業種バッティングNG
・保証会社審査落ち
・貸主審査落ち
まず多いのが、同業種バッティングNGという制限です。
同一のビルで新たに同業テナントを入れてしまうと、既存のテナントさんの売上に影響があると考えて同業種の出店についてはお断りするというものです。
次に賃貸借契約が出来ない理由として、業種を制限している貸店舗物件です。
例えばパーソナルジムなども断れられるケースが多いです。
これはジャンプしたり、レッスン時の掛け声、フィットネスマシーンの重量が重いなどを懸念される事が理由に挙げられます。
また業種制限で言うと飲食店居抜きの店舗物件では、いくら立地や条件が良くても飲食店以外は契約出来ないケースも普通に存在します。
これは美容室居抜きなども同様です。
他にも貸主独自の審査基準により借りたいと意思表示をしているのにも関わらず、借りられないという事もあります。
最近は減りましたが、例えば外国籍の方には貸したくないというのも1つの例ですね。
その他、テナント物件を契約をするには保証会社(借主が滞納した賃料を立て替えて払ってくれる)との契約が必須とする場合が多いです。
このとき借主の与信(支払い能力)が弱いと保証会社が判断すると保証会社の審査に通らずに、物件を借りられないケースもあります。
用途地域による制限
美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院などの店舗を開業する場合、都市計画法の”用途地域”の制限を確認する必要があります。
”用途地域”とは、特定の地域や地区における建築物や土地の利用目的を制限することを指します。
例えば住宅街のど真中に、工場などを建築されたら周りの方は困りますよね。
このように用途地域とは、土地活用の利用用途が混在しない様に、13種類に分類されて土地の利用目的が法律で定められています。
なお用途地域の13種類のうち、例えば住居専用地域については原則お店を出店させる事が出来ません。
いわゆる住宅街になりますが、こういったエリアで美容室などを開業したいなら、店舗併設住戸であれば出店できるケースもあります。
例えば店舗部分の面積が50平方メートル以下の面積かつ、店舗延べ床面積が全体の1/2未満にする必要があるなど細かい制限があります。
これについては、下記の「 建築基準法別表第二 」に記載されています。
なお、詳しくは「用途地域+出店予定の地域名」で検索してみて下さい。
用途地域の細かい取り決めについては下記にも一部抜粋致します。
1. 第一種低層住居専用地域 | 低層の戸建てや集合住宅が建てられます。また、店舗や事務所を兼ねた住宅で、非住宅部分が50平方メートル以下かつ建築物の延べ床面積の2分の1未満のものも建てることができます。 |
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2. 第二種低層住居専用地域 | 低層住宅に加え、150平方メートル以下の小規模な専門店舗が建てられます。 |
3. 第一種中高層住居専用地域 | 低層住宅に加え、中高層の住宅も建てられます。住宅の他に、病院、大学や500平方メートル以下の店舗等も建てることもできます。 |
4. 第二種中高層住居専用地域 | 住宅に加え、1,500平方メートル以下の店舗、事務所等が建てられます。 |
5. 第一種住居地域 | 3,000平方メートル以下の店舗、事務所、ホテル等を建てることができますが、パチンコ店や大きな工場等は建てられません。 |
6. 第二種住居地域 | 1万平方メートル以下の店舗、事務所、パチンコ店、カラオケボックス等を建てることができます。 |
建築基準法上の制限
美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院などを開業する場合、建築基準法の制限を確認する必要があります。
また用途地域内における建築物等の制限は「建築基準法」で定められているので、都市計画法とセットで確認が必要です。
次に、建物の使用用途が”特殊建築物”に該当するかも確認が必要です。
”特殊建築物”とは、映画館など不特定多数の方が多く集まる施設の事で、衛生上や防火上規制すべき建物になります。
そこで各業種ごとに表にしてまとめてみました。
美容室 | エステサロン | ネイルサロン | 鍼灸院 | 整骨院 | 整体 | |
建築物用途区分 | 08456 | 08460 | 08460 | 08250 | 08250 | 08460 |
別表第一 (特殊建築物) | 該当せず | 該当せず | 該当せず | 該当せず | 該当せず | 該当せず |
上記の通り、美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院などは「特殊建築物」には該当しません。
ちなみに「特殊建築物」に該当する業種の場合、用途変更という手続きが必要になる場合があります。
また用途変更をする場合は確認申請書を提出して、確認済証の交付を受ける必要があります。
消防法による制限
美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院などの店舗を開業する場合、消防法の制限を確認する必要があります。
消防法では、建物の使用用途に応じて「消防法施工例別表第一」により、20種類に分類されています。
そこで各業種ごとに表にしてまとめてみました。
美容室 | エステサロン | ネイルサロン | 鍼灸院 | 整骨院 | 整体 | |
令別表第一 | 15項 | 15項 | 15項 | 15項 | 15項 | 15項 |
用途 | 非特定用途 | 非特定用途 | 非特定用途 | 非特定用途 | 非特定用途 | 非特定用途 |
美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院などは、いずれも消防法上、15項という分類になります。
なお、各分類に応じて「特定用途」と「非特定用途」の2種類に区分されるのですが、15項は「非特定用途の防火対象物」という扱いになります。
一般的に特定用途とは「不特定多数の利用がされる建物」、非特定用途は「特定の方が利用される建物」として考えます。
なお最終的には建物全体のテナント構成や収容人数、階数、延床面積などにより必要となる消防設備の設備基準が変わります。
そのため自分の業種だけで建物全体の「用途」が決定される訳ではないため、注意が必要です。
次に、美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院を開業する場合、使用を開始する日の7日前までに管轄する消防署に「防火対象物使用開始届出書」の届け出が必要です。
内装工事を行う際、工事を着手する日の7日前までに同じく消防署に「防火対象物工事等計画届出書」の届け出も必要になります。
消防への届け出手順
事前相談→工事内容の届出→消防用設備等設置届出書の提出→防火対象物使用開始届出書の提出→消防検査
保健所の制限
美容室・マツエクサロン・鍼灸院・整骨院などを開業する場合、保健所の構造設備基準を確認する必要があります。
構造設備基準とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律施行規則第25条および柔道整復師法施行規則第18条により規定されている、開業するのに必要な設備条件です。
また美容室・マツエクサロンの場合(美容師法第 13 条)も同様に、構造設備基準が定められています。
この構造設備基準を満たさないと、保健所の検査で許可が出ず営業を開始する事が出来ません。
なお、エステサロンや整体院等、国家資格が必要としない分野は保健所の管轄外のため不要となります。
まとめ
以上、美容室・エステ・ネイル・鍼灸院・整骨院の用途地域・建築基準法・消防法ガイド!はいかがでしたか?
立地・賃料・広さなど契約条件がいくら魅力的なテナント物件でも出店出来ないケースはあります。
まずは、内装設計業者としっかり打ち合わせを行い、出店をすすめていきましょう。
建築基準法関連は、市区町村の建築指導課。消防については管轄地域の消防署にある、予防課の方が担当してくれます。
ポイント
- 店舗兼住宅を建設する場合用途地域により制限がある。
- 賃貸物件の店舗を借りる場合、美容室・整骨院・鍼灸院などは保健所の事前相談が必須
- 店舗物件を開業する際、消防署に開始使用届の提出が必要となる。