こんにちは、長井 達也です。
今回は、「アロマオイルが付着した洗濯物の火災予防ガイド!洗濯乾燥機で発火・故障に!」について詳しく解説します。
施術者の皆さん、エステサロンなどでオイルマッサージを行う場合、洗濯乾燥機から火災が発生することが多いのをご存知でしょうか?
その原因の多くは、拭き取り等でアロマオイルが付着したタオル類を洗濯乾燥させた際、乾燥機内でオイルが酸化して発火に至るためです。
東京消防庁によると、平成20年から平成24年の5年間で、オイルが付着した洗濯物を洗濯乾燥機で乾燥させたことによる火災が26件も発生しています。
これは深刻な問題であり、多くのエステサロンが直面するリスクです。
そのためセラピストの皆さんの中には、「アロマオイルが付着したタオル類を洗濯・乾燥させても大丈夫?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
業務効率を考えると、アロマオイルが付着したタオルも1台のドラム式洗濯乾燥機で洗濯・脱水・乾燥まで済ませたいという店舗も多いですよね。
そこで今回は、エステサロンでアロマオイルの施術を行う際に洗濯乾燥機を使用する場合の火災予防策について詳しく解説します。
具体的には、以下のポイントについて取り上げます。
- アロマオイルが付着したタオル類の火災原因
- オイルの酸化による発火のメカニズムを解説します。どのようにしてタオルに付着したオイルが危険な状態になるのかを理解しましょう。
- 洗濯乾燥機を利用したアロマオイル火災の事例
- 実際に発生した火災の事例を紹介します。これにより、具体的なリスクを知り、火災の恐ろしさを再認識しましょう。
- 洗濯乾燥機を利用したアロマオイル火災の予防策
- 火災を未然に防ぐための具体的な対策を説明します。安全にタオルを洗濯・乾燥させる方法や、使用する機器の選び方など、実践的なアドバイスを提供します。
これらの情報を通じて、エステサロンでの火災リスクを減らし、安全な環境を維持するための知識を深めていただければと思います。
それでは、アロマオイルが付着した洗濯物の火災予防策について詳しく確認していきましょう。
アロマオイルによる火災メカニズム
それでは初めに、アロマオイル(精油やベースオイル)が付着したものを洗濯乾燥させた場合に火災に至るメカニズムから解説します。
エステサロンでは、お客様の体に付いたアロマオイルや、オイルが付いてしまった施術ベッドなどをタオルで拭き取りされると思います。
この際、拭き取られたアロマオイルはタオル繊維の隙間に入り込み、普通に洗濯してもアロマオイルは水に溶け出さず簡単に落ちることはありません。
これはエステサロンの施術で使用されるアロマオイル(キャリアオイル・ベースオイル)には、水には溶け出さない不飽和脂肪酸、オレイン酸基・リノール酸基などが含まれているためです。
そのため、アロマオイルが付着したタオルを洗濯乾燥機で洗濯から脱水、乾燥まで行うと以下の通りになります。
発火のメカニズム
1,タオルに染み込んだアロマオイルが乾燥機の熱風で酸化。
2,酸化したオイルは乾燥機内で酸化熱を発生。
3,酸化熱は乾燥機内でタオルなどに熱を蓄積。
4,蓄積された熱が最終的に自然発火。
現在、東京消防庁では危険なアロマオイル火災を防ぐため、オイルが付着したタオルや衣類を絶対に乾燥機で乾燥させない様に注意喚起しています。
出典:東京消防庁 Tokyo Fire Department
アロマオイル付着時の火災事例
オイルマッサージを行うエステサロンで、アロマオイルが付着したタオルを洗濯乾燥機で洗濯から脱水、乾燥した際の火災事例が下記になります。
こちらのエステサロンでは、アロマオイルが染み込んだままの衣類を洗濯・乾燥させた直後に合成樹脂製のかご内に入れて放置されていました。
その後、タオル類に蓄積した酸化熱が原因で自然発火し火災に至りました。最小限にとどまっています。
アロマオイル火災のリスク軽減策は?
オイルマッサージの施術を行うエステサロンの皆さんへ。
改めてアロマオイルなど油分の付着した衣類・タオル等をドラム式洗濯乾燥機で乾燥させた場合、自然発火し火災に繋がる恐れが有ります。
通常の洗濯では、油分が完全に落ちない場合があります。
洗濯後でも油分の付着した衣類・タオル等は、絶対に乾燥機で乾燥させないのが鉄則である事が前提に下記を参照下さい。
アロマ火災の予防策1 ホホバオイルに変更する
原則として、アロマオイル(ベースオイル・キャリアオイル・精油)を拭き取りしたタオル類は洗濯後、自然乾燥が鉄則です!
しかし現実問題として、梅雨時などは自然乾燥で追いつかない場合も有りますよね。
そこでアロマオイルが付着したタオル類をドラム式の洗濯乾燥機などで仕方なく乾燥させる場合。
少しでも火災のリスク軽減させる方法として、ベースオイル(キャリアオイル)選びが重要になります。
これはアロマオイルによって酸化熱が発生しやすいオイルと、酸化熱が発生しにくいオイルがあるからです。
例えばアロママッサージで使用するオイルとして下記が有ります。
これらの中で"ホホバオイル "が一番熱に強く、酸化しにくいオイルだという事が分かっています。
ポイント
オリーブオイル
ホホバオイル
グレープシードオイル
ローズヒップオイル
マカダミアナッツオイル
アーモンドオイル
消防庁の「不飽和脂肪酸の酸化発熱に伴う出火危険性の解明(第1報)」という資料によれば、ホホバオイルが酸化しにくい(=酸化熱が発生しない)のは、ホホバオイルに含まれる主成分であるワックスエステルが熱に強いためだと説明されています。具体的には、消防庁の見解によれば、以下のような理由が挙げられています。
消防庁の見解
ホホバオイルは他の植物油とは異なった構造をもっており、ワックスが約50%含まれ熱に対する安定性に優れているため、酸化発熱を起こしにくいと考えられる。
出典:不飽和脂肪酸の酸化発熱に伴う出火危険性の解明(第1報)より
つまり、使用するオイルを「ホホバオイル」に変更するだけで、洗濯乾燥させても酸化熱が発生しにくくなり、結果として火災リスクが低減する可能性があります。
また、ホホバオイルは乾燥した砂漠地帯で育つ植物の種子から抽出した、効果効能の高いオイルとされています。
なお、「不飽和脂肪酸の酸化発熱に伴う出火危険性の解明(第2報)」の記載によれば、亜麻仁油、グレープシードオイル、小麦胚芽、菜種油、アーモンドオイル、オリーブオイル、マカデミアナッツオイルの中では、亜麻仁油が発熱性の高い油として紹介されています。
したがって、これらのアロマオイルを使用されているサロン店舗の皆様には、少しだけ割高かもしれませんが、安全性を考慮してホホバオイルへの変更をおすすめします。
また、一般的に開封済みの油は酸化が進み、発熱時の反応が早くなり(=燃えやすい)、自然発火につながる可能性があります。
そのため、アロマオイルは小さな容器のタイプで注文することも重要です。安全を第一に考慮し、適切な取り扱いにご注意下さい。
アロマ火災の予防策2 ノンオイルを選択する
最近はオイル(油)を使用しない、水溶性のリキッド(ノンオイル)が販売されています。
ノンオイルはグリセリンを主成分としている場合が多く、オイル以上に粘度があるものも存在しており、利用する施術者さんも増えているのではないでしょうか。
またノンオイルの主成分であるグリセリンは酸化はしづらい性質ですが、水と結合する事で「水和熱」を発生させる特徴があります。
そのため、ベースオイルとしてノンオイルに変更したとしても、火災のリスクが100%低減するとは断言出来ません。
しかしノンオイルの主成分であるグリセリンの引火点は180度前後、発火点は400度前後と、オイルより高い性質があります。
そのため乾燥機(ガス式のコインランドリーでも最大80度程度)を使用した場合でも、一般的なオイルより発火リスクは低いといえるかもしれません。
アロマ火災の予防策3 洗浄力の高い洗剤を使用する
アロマオイルが付着したタオル類の洗濯も請け負うクリーニング店では、油脂分解性の高い洗剤を使いアルカリ剤を多めに使用します。
これはオイルが酸化(=酸性)しているので、アルカリ性の洗剤を利用して中和(中性化)する事で汚れが落ちやすくなるからです。
そこでオイルマッサージを行うサロン店舗で使用する洗剤としてオススメなのが、花王のプロフェッショナルシリーズ「洗濯用洗剤アタック 業務用」です。
花王のプロフェッショナルシリーズは店頭では見かけないと思いますが、ネット通販であれば手軽に入手出来る業務用洗剤です。
付着したタンパク質の汚れや機械油、オイル、泥、食用油などの頑固油汚れを優れた洗浄力でパワフルに洗い上げるために開発された商品です。
元々は工場や飲食店など油汚れのひどい現場で働く方のユニフォームを洗浄するために開発された業務用洗剤です。
これらの業務用洗剤を使用することで、アロマ火災のリスク低減に繋がる可能性があります。
油汚れがひどくなるとベロアのタオル生地なら黒ずみが気になりますよね。そういった観点でも洗浄力の高い洗剤選びが重要です。
ただし、洗浄力が高いという事は色落ちや生地を傷める要因にもなるので注意して下さい。
ちなみ私はドラム式洗濯乾燥機を使用してタオル類を洗う場合、ジェルボール3Dを2個以上入れる&少量で洗濯(詰め込みすぎない)事で対応しています。
洗濯物を詰め込みすぎて洗濯乾燥させると、酸化熱が発生した場合に蓄熱→発火に至りやすくなるため注意が必要です。
また、洗剤の成分について、下記に列記しておきますね。
炭酸ソーダ(炭酸塩)=アルカリ剤
油脂を乳化させ、タンパク質を分解する事が出来ます。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
石鹸の主成分で汚れを落とす作用のある界面活性剤のことです。
ケイ酸塩
石鹸のはたらきを助ける アルカリ助剤の事で油汚れに効果を発揮します。
アルキル硫酸エステルナトリウム
石けんよりも溶解性や洗浄性が優れており、家庭用や工業用の洗剤としてよく使われています。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
石鹸の主成分の1つ界面活性剤のことです。
過炭酸ナトリウム
漂白剤、除菌剤、消臭剤としてよく使われます
脂肪酸ナトリウム
石鹸の主成分で汚れを落とす作用のある界面活性剤のことです。
【参照元】
花王洗濯用洗剤の成分
http://www.kao.com/jp/qa_cate/clothcleanser_04_01.html
石鹸生活のアイテム辞典
http://www.live-science.com/honkan/partner/
アロマ火災の予防策4 洗浄力高い洗濯乾燥機
アロマオイルが付着したタオル類を洗濯・乾燥させる場合、お店の終了後に洗濯乾燥まで行い、翌日に洗濯物を畳みたいという方も多いですよね。
そうなると、洗濯容量が大きくスピーディーに乾かせられるドラム式洗濯乾燥機を選ばれる事になります。
しかしドラム式洗濯機とは、縦型洗濯機と違って少量の水で洗う事ができる節水型の洗濯機になります。
つまりドラム式洗濯機による少量の水で洗濯すると、繊維の隙間にまで染み込んだアロマオイルはさらに水に溶け出しにくい状況になります。
そこでアロマオイル火災を予防するため、今回はドラム式洗濯乾燥機の選び方についてアドバイスします。
まず、ドラム式洗濯乾燥機には大きく分けて2つの種類が有ります。
ドラム洗濯乾燥機 | ヒーター式 | ヒートポンプ式 |
乾燥方法 | 常にドライヤーで洗濯物を乾かしている様なものなので、電気代も高くなります。 乾燥時に発生する水蒸気を一旦水で冷やして水滴として排水するため、乾燥時に水道水も必要になります。 | エアコンの除湿機能と同じ原理で、乾燥機内で除湿を行う事で洗濯物を乾かします。 ヒーター式の様に熱源となるものや冷却する際の水道水も不要なので、省エネ性能が高い洗濯乾燥機になります。 |
乾燥温度 | 乾燥温度は80度程度 | 乾燥温度は60度程度 |
価格 | 10万前後から購入可能 | 20万以上が主流となる。 |
ドラム式洗濯乾燥機は、ヒーター式(水冷式)とヒートポンプ式の2種類があり、基本的にヒートポンプ方式の方が省エネ性能が高くなります。
また、アロマオイルによる火災を防ぐためにも、注目してほしいのが乾燥温度です。
酸化熱(タオルに染み込んだオイルは乾燥機の熱風で酸化し、酸化熱が発生する)が発生する条件は、乾燥機の熱風温度に比例して高まる関係性があります。
そのためクリーニング業界ではオイルが付着した洗濯物に対しては、下記の3つの方法を推奨しています。
注意ポイント
乾燥時は低温設定で乾燥させる。
乾燥の最終段階では加熱を止めてクールダウンさせる。
乾燥後はすぐに取り出して広げておく。
つまり低温でタオル類などを乾燥させた方が酸化熱の発生を軽減し、また酸化熱が発生するまでの時間を稼ぐ事ができます。
だからこそ、ヒートポンプ方式の方がヒーター式の洗濯乾燥機に比べ火災リスクが軽減する可能性が高まるという事になります。
またヒーター式でも、ナイトモード(低温乾燥)が搭載されている場合、ナイトモードを選択する事で少しでもリスク低減に繋げる事が出来ます。
(※乾燥時間が増します)
また節水のため、すすぎを1回にしている方は2回にするなども大切です。
アロマ火災の予防策5 マイクロナノバブルを導入する
サロン店舗でアロマオイルが付着したタオル類を洗濯する場合、ドラム式洗濯乾燥機や縦型洗濯機の洗浄能力を上げる方法として水道水をマイクロナノバブルに変換できる器具を取り付ける方法があります。
なお、マイクロナノバブル(ウルトラファインバブル)で洗浄力が上がる仕組みは、小さい泡が繊維の奥にまで染み込んだ有機物(油も有機物)に接触することで洗い流すというものです。
おすすめのドラム式洗濯乾燥機
アロマオイルとドラム式乾燥機という組合せが起因して起こる火災に対して、少しでもリスクを軽減されたい場合におすすめするのが、ヒートポンプ式のPanasonic ななめドラム洗濯乾燥機です。
特徴として約40℃つけおきコース/約40℃おまかせコースなど温水で洗濯出来るタイプなので、水洗いしか出来ない洗濯乾燥機よりも油よごれ(=オイル)を落としやすい点です。
ちなみにホホバオイルやグレープシードオイルなど植物油は約50~60度で融点に達します。
つまり、少し熱いお湯で洗うと繊維の隙間にしみ込んで固まった油汚れは、お湯に溶け出して取れやすくなります。
また泡洗浄モードがあるタイプなら、さらに繊維の奥まで染み込んだ油汚れが落ちやすくなるので、油汚れの付着を減らして乾燥させる事が可能です。
結果、繊維の隙間にしみ込んだアロマオイルがお湯で流れ落ちやすくなり、乾燥時はヒートポンプの低温乾燥のため酸化熱の発生リスクを軽減出来ます。
またエステサロンなどでアロマオイル火災が発生するのは、営業終了後にタオル類を洗濯乾燥機につめて従業員が無人状態になったときです。
つまり洗濯乾燥機のタイマー機能で営業開始間際に仕上がるように設定する事も大切です。
火災が発生した場合の対処
アロマオイルを含んだタオルなどを洗濯乾燥機で乾燥させる以上、どんなに安全策を講じてもアロマオイル火災の発生リスクを0にする事はできません。
そこで火災が発生してしまった場合でも、被害を最小限に食い止めるためのリスクヘッジも重要です。
方法としては、WIFI環境があるのであれば上記の様なネットワークカメラを用意しましょう。これらのカメラを洗濯乾燥機方面に撮影しておけば、火災発生時に動体検知等(炎のゆれなど)で作動しスマホに異常を通知することが可能になります。
また、これは火災の感知から消火までを全自動で行う、自動消火装置です。
簡易のスプリンクラーといったところですね。コンパクトで取り付けや点検も簡単。天井面に設置し、火災が発生すれば自動的に消火してくれます。
まとめ
以上、『アロマオイルが付着した洗濯物の火災予防ガイド!洗濯乾燥機で発火・故障に!』はいかがでしたか?
改めて、アロマオイルが付着した洗濯物を乾燥機で乾かした場合、どんなに予防してもリスク0にはなりません。
そのため、閉店時に乾燥機をまわして帰宅し、無人状態のサロンで火災に至る事例が多いです。
そこで、例えばタイマーをセットして朝の出勤時にちょうど終了する様など、今行っている行為を1つづつ見直して対策を行いましょう。
ポイント
- 鉄則!油分が付着したタオルは洗濯した後であっても洗濯乾燥機を使わない!
- オイルマッサージを行うサロンは、油の分解洗浄能力の高い洗剤を使う。
- ベースオイルをホホバオイルなど発火のリスクの少ないものに変更する。
- 選択乾燥時、お湯洗い&低温乾燥で酸化熱が発生しにくいので火災予防になる。
- 低温乾燥出来るのは、ヒートポンプ式洗濯乾燥機になる。