こんにちは、長井 達也です。
今回は” chocoZAP(ちょこざっぷ)のビジネスモデル解説!フランチャイズ展開は?”です。
パーソナルジムで有名なRIZAPが、今回セルフのフィットネスジム事業chocozapを開始しました。
2023年3月にchocozap(ちょこざっぷ)の会員数が既に35万人超(2023/3月末時点)、さらに2023年8月には80万人突破と順調な滑り出しとなっています。
一方chocozapの店舗数(開業予定含む)は 2023年3月末に479店だった店舗数が、820店舗(2023年7月17日現在)と急成長しています。
そんなchocozapの物件募集要件は、視認性が良く好立地な1階路面店をメインにしているのが特徴です。※最近は空中階も増えています。
また出店されている坪数は想定25坪以上、賃料目線の中央値は今後13000円以下に押さえて行きたいところではないでしょうか。
chocoZAPの特徴 ・chocozapの月額2,980円(税込み3,278円)で24時間使い放題
・chocozapはフィットネスだけでなくセルフエステ・セルフ脱毛も可能※1
・chocozapの会員登録や入退室&予約は全てchocozapのアプリで完結。
現在も同種のチェーン店を凌駕する広告予算費を投入しチラシの投函・駅前や店舗前での配布・SNS・PPC等で会員を集めています。
そのため同業他社の方にとっては、近場にchocoZAP(ちょこざっぷ)が出店してくる事で脅威に感じる方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、
- chocozap(ちょこざっぷ)とは?
- chocozap(ちょこざっぷ)のビジネスモデルとは?
- chocozap(ちょこざっぷ)の利益率・損益分岐点は?
- chocozap(ちょこざっぷ)の課題は?
と言ったchocozapの詳細について、分かりやすく解説していきます。
※1「セルフ脱毛」は8月下旬〜9月中に順次導入予定。またセルフ脱毛の利用にはアプリからのご予約が必要になり、1枠20分、最大2枠連続(40分間)までの予約となります。
chocoZAPとは?
2023年8月現在、フィットネス業界においてchocoZAPが会員数日本一となりました。(※ちょこざっぷ調べ)
1位 | chocoZAP | RIZAP株式会社 | 80.0万人 | 2023年8月15日21:30時点 |
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2位 | エニタイムフィットネス | 株式会社Fast Fitness Japan | 78.0万人 | 2023年6月末時点 |
3位 | カーブス | 株式会社カーブスジャパン | 77.2万人 | 2023年5月末時点 |
chocozap(ちょこざっぷ)の特徴は、フィットネスの利用継続率が1年間で50%以下と言われている中、継続低下に繋がる多くの要素(キツイ運動、高額な料金など)を排除した点にあります。
具体的には月額2980円(税別)のサブスクを採用。
ターゲットも初心者向け・運動嫌いな人向けとなっており、1日たった5分の「ちょいトレ習慣」で、ラクに続けられるプログラムになります。
その他、セルフエステやセルフ脱毛、セルフネイル(ネイルプリンター)など、サービスの”コンビニ化”で差別化を目指した、新感覚のフィットネスジムがchocozap(ちょこざっぷ)です。
最近では、ドリンク機器の設置や、電動マッサージチェア、ワークスペース、セルフホワイトニング、ゴルフ練習場などを設置する店舗も誕生させています。
現在は東京など関東を中心に800店舗を超えるなど破竹の勢いで出店しており、新規オープンも続々と予定されています。
chocozapのライバルとしては、カーブス(日本では2000店舗 月額7,000円台)、24時間フィットネスで有名なJOYFITの別業態(FIT365 月額2980円)が該当するのではないでしょうか。
これらのライバルに対してchocozapは、RIZAPの圧倒的な知名度を生かしたブランディングやノウハウにより差別化していくと思います。
chocoZAPの内容
・初心者でも、運動嫌いでも続けやすい
・月額2980円(税別)の低価格
・初心者でも使いやすい、日本人の骨格にあわせた完全特注マシン完備
・使い方がわからなくても安心!マシンの使い方動画で詳しく解説
・セルフエステやセルフ脱毛もOK
chocoZAPのフランチャイズ展開は?
chocozapは現在、FC加盟店を募集している動きは見当たりません。
なおRIZAPが2022/09/28に発表した中期経営計画説明資料によると、chocozap(ちょこざっぷ)などの成長事業に 500億円規模の投資を予定。(23/3期~26/3期)
さらに同一沿線に集中出店するなど、ドミナント戦略でchocozap(ちょこざっぷ)を出店していく事が明記されています。
以上からフランチャイズ加盟店の募集は行わず、直営店舗によるマスマーケティングが想定されます。
chocozapのビジネスモデルと損益分岐点
今回、大阪市中央区久太郎町3丁目(約28坪 坪単価2万円前後)に2022年9月16日オープンするchocoZAP本町店を元に計算していきたいと思います。
まずchocozap(ちょこざっぷ)のベースとなる売上は、1顧客あたり月額3278円を徴収するサブスクモデルの定額料金です。
次に基本的には無人管理となるため、経費としては賃料、光熱費、内装造作・備品類の減価償却・通信費(光ファイバー)・クレジットカードの決済手数料などがあります。
※本部経費である販管費は考慮していません。
これらを考慮して損益分岐を計算すると、上記の表の通り月間280人の顧客数が必要となりました。
この事からchocozapを安定経営していくためには顧客を効率よくストックしLTVを伸ばしていく施策が重要となります。
はてな
LTVを直訳すると顧客生涯価値となり、一人のお客様が最初の来店から最後の来店までに支払ってくれた総収益になります。
そのためハード面ではセルフのフィットネスジムが多いエリアに出店し、顧客を塗り替えていく必要性があります。
そして顧客を飽きさせない、来店動機の拡張(=コンビニ化)が重要になります。
一方ソフト面では、顧客のモチベーションを維持させる事がなにより大切になるのではないでしょうか。
chocoZAPの課題は?
立地面の課題
chocozap(ちょこざっぷ)は、セルフのフィットネスジムやスポーツジムが出店しているエリア(職住近接)の1階路面店舗をメインに出店しています。
確かに好立地な場所に出店すれば認知度UPに貢献しますが、その分損益分岐点も上昇してしまいます。
実際、カーブスが出店している店舗の出店要件が空中階で坪単価1万円程度(EVなしでも可能)なのに対し、チョコザップは2万円超の物件でも出店します。
これはカーブスが完全にコミニティービジネスであるの対し、chocozap(ちょこざっぷ)はハコモノビジネスである点を物語っています。
つまり顧客数を維持してLTVを伸ばしていく上で、カーブスの戦略が有利だと言える状況です。
なお男女両方を顧客として取り込めるという点では、chocozap(ちょこざっぷ)にも勝機があるとおもいます。
集客面の課題
chocozap(ちょこざっぷ)は、駅前でビラを配ったり、ポスト投函したりとオンライン・オフラインのハイブリットで販促を展開しています。
これはコロナ禍で同業他社のシニア層が多くが退会したため、これらの見込客にアプローチするためオフラインによる販促を強化していると思われます。
ただし潤沢な資金を元に販促を行っても、見込客へのリーチが一巡すれば、以後の顧客獲得コストは急激に上昇に転じるはずです。
ハード面の課題
chocozapのハード面(設備)については、常に顧客を飽きさせない来店動機の拡張が重要です。
実際、当初は無かった機器(ドリンクバー、ネイルプリンター、電動マッサージチェア、ワークスペース、ゴルフ練習場)が続々と投入されています。
そこで今後は、AIが搭載されたスマートミーラーなどが普及してくるはずです。
そうなれば現実世界に仮想現実世界を重ねた拡張現実(AR)で、より具体的な未来の私など、ビフォーアフターを提示する事が可能になるかもしれません。
またセルフエステやセルフ脱毛などの個室は事前予約制なのですが、スマートロックなどの仕組みがないため無断利用などのトラブルもあります。
このあたりは顧客のITリテラシーなどのジレンマもあるため難しい問題です。
ソフト面の課題
chocozapを監修するRIZAPは、スポーツジムのアンチテーゼとして「結果にコミット」する事で売上を伸ばしてきたパーソナルジムです。
その成功体験を否定し、ビジネスの根幹である”人”を排除した無人店舗のchocozapが、どこまでLTVを伸ばす事が出来るのか正直疑問です。
何故ならモチベーションを維持させる事でLTV(生涯顧客価値)を伸ばしていく事が、サブスクモデルには重要になります。
アプリの課題
chocozapでは「アプリ」を通して、結果にコミットしていく方針です。
確かにそれは省人化・無人化に繋がる効率の良い施策に思えますが、顧客が求めているのは”場所”ではなく”コミニティ”なのではないでしょうか?
また、そもそもアプリのコンテンツも出来が良いとはいえません。
例えば自宅でもトレーニングできる様に「RIZAP現役トレーナーによるLIVE配信」などコンテンツ動画の見放題などが無料提供されています。
しかしyoutubeでも充分な動画コンテンツが揃っていますよね。
アプリ機能として必要なのは動画コンテンツではなく、分かりやすい報酬(現金・景品など)、いわゆるゲーミフィケーション機能だと思います。
さらにスマホアプリの良し悪しを決めるのは、SIer(システム開発を請け負う企業)ではありません。
発注する側に適切な人材が揃っていないと当然ながら良いアプリは出来ないため、しばらくアプリ開発は苦戦するのではないでしょうか。
なお1点気になるのは、chocozap(ちょこざっぷ)の入会特典で、スマートウォッチ(ウェアラブルデバイス)を提供している点です。
例えば住友生命の「Vitality健康プログラム」では、スマートウォッチ等により取得したバイタルデータを登録することで、保険料金を割引く事ができます。
このようなプログラムをRIZAPが保険会社(ライフネット生命あたり?)と提携してサービス提供した場合、面白い展開になるかもしれません。
まとめ
以上” chocoZAP(ちょこざっぷ)のビジネスモデル解説!フランチャイズ展開は?”はいかがでしたか?
2023年ヒット予測として日経トレンディが選ぶ第1位は「コンビニジム」になったそうですが、これまでフィットネスジム業界では「意識高い系」の方を主要顧客としてきました。
chocoZAPの「ちょいトレ習慣」の様に、コナミスポーツでも「ゆるジム通い」と銘打ってライトユーザーの取り込みを行い、2022年は「コンビニジム」元年となりました。
今後も日本全体が高齢化に向かい、医療費の自己負担率も上昇していく過程では予防医学やQOLが見直されるはずです。
そうなるとフィットネス業界でも、運動が苦手な人や老人をメインターゲットにしてくのは自然の流れなのかもしれません。
これは人口動態を見ても「意識高い系」よりも、これまでフィットネスとは無縁であった層にアプローチが必要なのは明白です。
しかしながら現段階では日本人の国民性や国民皆保険制度によって、予防医学には無頓着である一方、医療保険が大好きという国民性があります。
報酬がないトレーニングというのは日本人には時期尚早にも思えます。
また薄利多売なビジネスモデルですが、顧客層の裾野を広げたマスマーケティングでは広告費も掛かります。
さらに他社とシェア争いが激化する可能性もあり、今後も「コンビニジム」業界は注目されていくのではないでしょうか。
ポイント
・chocoZAPは2022年に事業を開始して現在で138店舗を超える事業展開(2022/10/10現在)
・月額2980円(税別)という低価格を武器に既存のフィットネス事業と差別化。
・サービスのコンビニ化という新しいビジネスモデル。
・RAIZAPで蓄積されたノウハウが生きないとLTVが失速する可能性も。