こんにちは、長井 達也です。
今回は『チョコザップ(chocoZAP)のビジネスモデル解説!フランチャイズや経営戦略は?』について解説致します。
パーソナルジムで有名なRIZAPが、セルフのフィットネスジム事業チョコザップ(chocozap)を2022年から開始。
2023年3月にチョコザップ(chocoZAP)の会員数は35万人超、さらに2023年11月14日時点では、退会者を除いた会員数が『100万人』を突破するなど順調な滑り出しとなっています。
また、チョコザップの店舗数(開業予定含む)も、2023年3月末に479店だった店舗数が、1000店舗(2023年9月28日現在)を超えるなど急成長を遂げています。
そんなチョコザップの物件募集要件は、視認性が良く好立地な1階路面店をメインにしているのが特徴です。※最近は空中階も増えています。
また、出店されている坪数は想定35坪以上、賃料目線の中央値は今後13000円以下に押さえて行きたいところではないでしょうか。
チョコザップの特徴 ・チョコザップの月額2,980円(税込み3,278円)で24時間使い放題
・チョコザップはフィットネスだけでなくセルフエステ・セルフ脱毛も可能※1
・チョコザップの会員登録や入退室&予約は全てチョコザップのアプリで完結。
現在も同種のチェーン店を凌駕する広告予算費を投入し、チラシの投函・駅前や店舗前での配布・SNS・PPC等で会員を集めています。
そのため同業他社の方にとっては、近場にチョコザップ(chocoZAP)が出店してくる事で脅威に感じる方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、
- チョコザップ(chocoZAP)とは?
- チョコザップ(chocoZAP)のビジネスモデルとは?
- チョコザップ(chocoZAP)の利益率・損益分岐点は?
- チョコザップ(chocoZAP)の課題は?
と言ったチョコザップの詳細について、分かりやすく解説していきます。
※1「セルフ脱毛」は8月下旬〜9月中に順次導入予定。またセルフ脱毛の利用にはアプリからのご予約が必要になり、1枠20分、最大2枠連続(40分間)までの予約となります。
チョコザップとは?
みなさんはチョコザップは、RIZAP株式会社が運営する「セルフフィットネスジム」だと認識されていますよね。
でも、他の24時間フィットネスジムと、具体的にどのような差別化が出来ているのかと聞かれたら答えられますか?
実は、そもそもチョコザップを「フィットネスジム」だと見誤ると、このビジネスモデルを正しく認識する事ができなくなります。
そこで今回、チョコザップの誕生から事業モデルについて説明していきます。
チョコザップ(chocoZAP)は2022年5月2日には独自ドメインを取得し、24時間営業のセルフフィットネスジムとして誕生。
2023年8月現在、フィットネス業界においてチョコザップが会員数日本一となりました。(※chocoZAP調べ)
1位 | チョコザップ | RIZAP株式会社 | 80.0万人 | 2023年8月15日21:30時点 |
---|---|---|---|---|
2位 | エニタイムフィットネス | 株式会社Fast Fitness Japan | 78.0万人 | 2023年6月末時点 |
3位 | カーブス | 株式会社カーブスジャパン | 77.2万人 | 2023年5月末時点 |
チョコザップ(chocoZAP)の特徴は、フィットネスの利用継続率が1年間で50%以下と言われている中、継続低下に繋がる多くの要素(キツイ運動、高額な料金など)を排除した点にあります。
具体的には月額2980円(税別)のサブスクを採用し、ターゲットも初心者向け・運動嫌いな人をターゲットにしており、1日たった5分の「ちょいトレ習慣」で、ラクに続けられるプログラムです。
その他、セルフエステやセルフ脱毛、セルフネイル(ネイルプリンター)など、サービスの”コンビニ化”で差別化を目指した、新感覚のフィットネスジムがチョコザップ(chocoZAP)です。
最近では、ドリンク機器の設置や、電動マッサージチェア、ワークスペース、セルフホワイトニング、ゴルフ練習場、洗濯乾燥機、シェアサイクルなどを設置する店舗も誕生させています。
東京など関東を中心に1000店舗を超えるなど破竹の勢いで出店しており、新規オープンも続々と予定されています。
現在チョコザップの競合相手としては、一般的にカーブス(日本では2000店舗 月額7,000円台)、24時間フィットネスで有名なJOYFITの別業態(FIT365 月額2980円)が挙げられています。
これらの競合に対してチョコザップはRIZAPの知名度を生かしたブランディングやノウハウにより差別化していくと思います。
また、チョコザップの競合は必ずしもフィットネス業界だけではありません。
それはチョコザップが1つの空間で時間を細切れにし、多数に貸し出すシェアリングエコノミー型のビジネスモデルだからです。
例えば、シェアリングエコノミーの典型として、カーシェアリングがあります。
これは日本の自家用車が平均4%程度の稼働率で、
チョコザップも同様に、
つまり、シェアリングエコノミー(レンタルスペース事業)を、Netflix のような『サブスク』&『ロングテール戦略』で展開しているのがチョコザップのビジネスモデルになります。
そのため今後、チョコザップは多くの業態・業界に ディスラプションを起こしていくというのが戦略になるのではないでしょうか。
※詳しくは最後に記載しています。
チョコザップの内容
・初心者でも、運動嫌いでも続けやすい
・24時間営業で月額2980円(税別)の低価格
・初心者でも使いやすい、日本人の骨格にあわせた完全特注マシン完備
・使い方がわからなくても安心!マシンの使い方動画で詳しく解説
・セルフエステやセルフ脱毛もOK
チョコザップのフランチャイズ展開は?
チョコザップでは現在、FC加盟店を募集している動きはありません。
これは顧客の契約継続率を伸ばすため敏速な経営判断を行えることが、チョコザップのビジネスモデルでもあるからです。
言い換えるなら、チョコザップでは足かせとなるフランチャイズ展開が不向きだと言えます。
事実、RIZAPが2022/09/28に発表した中期経営計画説明資料では、チョコザップ(chocoZAP)などの成長事業に 500億円規模の投資を予定。(23/3期~26/3期)
同一沿線に集中出店するなど、ドミナント戦略でチョコザップ(chocoZAP)を出店していく事が明記されています。
以上から、今後もチョコザップではフランチャイズ加盟店の募集は行わず、直営店舗による出店が予想されます。
チョコザップのビジネスモデルと損益分岐点
今回、大阪市中央区久太郎町3丁目(約28坪 坪単価2万円前後)に2022年9月16日オープンするチョコザップ本町店を元に計算していきたいと思います。
まずチョコザップ(chocoZAP)のベースとなる売上は、1顧客あたり月額3278円を徴収するサブスクモデルの定額料金です。
次に基本的には無人管理となるため、経費としては賃料、光熱費、内装造作・備品類の減価償却・通信費(光ファイバー)・クレジットカードの決済手数料などがあります。
※本部経費である販管費は考慮していません。
これらを考慮して損益分岐を計算すると、上記の表の通り月間280人の顧客数が必要となりました。
この事からチョコザップを安定経営していくためには、顧客を効率よくストックしLTVを伸ばしていく施策が重要となります。
はてな
LTVを直訳すると顧客生涯価値となり、一人のお客様が最初の来店から最後の来店までに支払ってくれた総収益になります。
そのためハード面ではセルフのフィットネスジムが多いエリアに出店し、顧客を塗り替えていく必要性があります。
そして顧客を飽きさせない、来店動機の拡張(=コンビニ化)が重要になります。
一方ソフト面では、顧客のモチベーションを維持させる事がなにより大切になるのではないでしょうか。
チョコザップの課題は?
立地面の課題
チョコザップ(chocoZAP)の出店戦略ですが、セルフのフィットネスジムやスポーツジムが出店しているエリア(職住近接)の1階路面店舗をメインに出店しています。
カーブスが出店している店舗の出店要件が空中階で坪単価1万円程度(EVなしでも可能)なのに対し、チョコザップは2万円超の物件でも出店します。
確かに、好立地な場所にチョコザップを出店すれば認知度UPに貢献しますが、その分損益分岐点も上昇してしまいます。
これはカーブスが完全にコミニティービジネスであるのに対し、チョコザップ(chocoZAP)はハコモノビジネスである点を物語っています。
つまり顧客数を維持してLTVを伸ばしていく上では、カーブスの戦略が有利だと言える状況です。
なお男女両方を顧客として取り込めるという点では、チョコザップ(chocoZAP)にも勝機があると言えます。
集客面の課題
チョコザップ(chocoZAP)の集客は、駅前でビラを配ったり、ポスト投函したりとオンライン・オフラインのハイブリッドで販促を展開しています。
コロナ禍で同業他社のシニア層が多くが退会したため、これらの見込客にアプローチするためオフラインによる販促を強化しているのだと思われます。
ただし潤沢な資金を元に販促を行っても、見込客へのリーチが一巡すれば、以後の顧客獲得コストは急激に上昇に転じるはずです。
そこでチョコザップでは今後、紹介制度や、退会者の掘り起こしも強化していくのではないでしょうか。
ハード面の課題
チョコザップのハード面(設備)については、常に顧客を飽きさせない来店動機の拡張が重要です。
実際、当初は無かった機器(ドリンクバー、ネイルプリンター、電動マッサージチェア、ワークスペース、ゴルフ練習場)が続々と投入されています。
今後は、コインロッカーやコインシャワーなども追加するのではないでしょうか。
これは、顧客層を広げていく過程でどうしても単一価格では収まらなくなるため、どこかでアップセルが必要になるからです。
なおシャワーブース単体の設置であれば、公衆浴場法やそれに付随する条例には接触しません。
そのため都市型チョコザップと郊外型チョコザップなど、差別化していく可能性も考えられます。
次に、セルフエステやセルフ脱毛、ワークスペースなどは事前予約制なのですが、スマートロックなどの仕組みがないため無断利用のトラブルもあります。
このあたりは顧客のITリテラシーなどのジレンマもあるため難しい問題です。
ソフト面の課題
チョコザップを監修するRIZAPは、スポーツジムのアンチテーゼとして「結果にコミット」する事で売上を伸ばしてきたパーソナルジムです。
その成功体験を否定し、ビジネスの根幹である”人”を排除した無人店舗のチョコザップが、どこまでLTVを伸ばす事が出来るのか正直疑問です。
何故ならモチベーションを維持させる事でLTV(生涯顧客価値)を伸ばしていく事が、サブスクモデルには重要になるからです。
また清掃の不行き届きなどもクレームや退会率の上昇にも繋がるため、クレンリネスをどう解決していくのかも重要な課題です。
アプリの課題
チョコザップでは「アプリ」を通して、結果にコミットしていく方針です。
確かに、省人化・無人化に繋がる効率の良い施策に思えますが、そもそもアプリのコンテンツは、まだまだ改良の余地が残されています。
例えば、自宅でもトレーニングできる様に「RIZAP現役トレーナーによるLIVE配信」など、コンテンツ動画の見放題などが無料提供されています。
しかし、最近ではyoutubeでも充分な動画コンテンツが揃っていますよね。
アプリ機能として必要なのは動画コンテンツではなく、分かりやすい報酬(現金・景品など)、いわゆるゲーミフィケーション機能だと思います。
さらにスマホアプリの良し悪しを決めるのは、SIer(システム開発を請け負う企業)ではありません。
発注するチョコザップ側に適切な人材が揃っていないと、当然ながら良いアプリは出来ないため、しばらくアプリ開発は苦戦するのではないでしょうか。
なお1点気になるのは、チョコザップ(chocoZAP)の入会特典で、スマートウォッチ(ウェアラブルデバイス)を提供している点です。
例えば住友生命の「Vitality健康プログラム」では、スマートウォッチ等により取得したバイタルデータを登録することで、保険料金を割引く事ができます。
このようなプログラムをRIZAPが保険会社(ライフネット生命あたり?)と提携し、サービス提供した場合は面白い展開になるかもしれません。
差別化の課題
チョコザップのビジネスモデルは、類似するフィットネスジムを産む結果となりました。
サービス名 | 価格(税抜) | ビジネスモデル | 対象 | 特徴 |
チョコザップ | 2,980 | 低価格・24時間・365日・コンビニ化 | 初心者 | ・直営店舗のみ ・全店舗相互利用可 |
FIT365 | 2,980 | 低価格・365日・有料オプション | 初心者~ 上級者 | ・JOYFIT24の姉妹ブランド ・フランチャイズ展開 |
LifeFit | 2,980 | 低価格・24時間・365日 | 初心者~ 上級者 | ・1回利用も可(500円) ・フランチャイズ展開 |
fitplace | 2,980 | 低価格・24時間・365日 | 初心者~ 上級者 | ・契約期間の縛り在り ・フランチャイズ展開 |
なお、チョコザップは他社がフランチャイズ展開している中、直営店舗のみで相互利用ができるという特徴を持っています。
この特徴を最大限活かすためには、今後も「コンビニ化」を進め、フィットネス以外の利用用途でも顧客の心をつかんでいく必要があります。
その際、限られた面積の中でフィットネス以外の需要にも対応していくには、より繊細な出店計画が必要になるのではないでしょうか。
それと同時に、チョコザップではミニマムでは35坪ぐらいから店舗展開していますが、今後は50坪を超える中型店舗も主流にしてくのではないでしょうか。
まとめ
以上” チョコザップ(chocoZAP)のビジネスモデル解説!フランチャイズ展開は?”はいかがでしたか?
2023年、日経トレンディが選ぶヒット予測の第1位は「コンビニジム」に輝きました。
事実、チョコザップの「ちょいトレ習慣」だけでなく、コナミスポーツでも「ゆるジム通い」と銘打ってライトユーザーを取り込むなど、この年は「コンビニジム」元年となりました。
これは、日本の人口動態を考慮すると、「意識高い系」よりも運動が苦手な人や高齢者を主要ターゲットに据えるのは自然な流れなのかもしれません。
しかし、日本人は国民皆保険制度によって予防医学にはあまり興味がない一方で、医療保険には熱心な国民性があります。そのため、報酬のないトレーニングを広めるのはまだ時期尚早かもしれません。
そこで、チョコザップ(chocoZAP)では、「フィットネスジム」というカテゴリーに縛られず、24時間営業の1000店舗という規模を生かした「サービス業のコンビニ化」を模索しています。
つまり、チョコザップの見方を変えれば、小口の転貸ビジネス(不動産ビジネス)を行っているとも言えそうです。
またチョコザップは今後、「美容」「ライフスタイル」「エンターテイメント」などの領域で独自のソフトウェアコンテンツを提供し、セルフエステ(脱毛・ホワイトニング・ネイル)・コワーキング・ランナーズステーション・有料パウダールームなど、さまざまな業界に存在する短時間のニッチ需要を寄せ集める事で、 ディスラプション(破壊的変革)
これは、まさに「ロングテール戦略」そのものであり、一時的なブームに左右されず、安定して顧客の長期的な価値(LTV)を高める可能性があります。
例えば、ホワイトニングをされる方というのは、就職や婚活など目的を持った方よりも「漠然」と白い歯になりたいという事で始められる方が多く、ネットフリックスにも似通ったロジックです。
しかし、チョコザップが「ロングテール戦略」を採用する場合、限られた面積で多品種の品揃えを提供する必要があります。
そのため、店内に設置した防犯カメラをAIカメラとして活用し、顧客の行動履歴を分析し、アプリを通じてプッシュ通知を送るレコメンド機能など、IT技術の活用が求められます。
さらに、薄利多売なビジネスモデルだけでなく、都市型や郊外型などの専門性を持たせ、提供するサービスをアップセルする取り組み(有料オプション)も登場する可能性があります。
今後、他社との競争が激化する可能性もあり、「コンビニジム」業界はますます注目されるのではないでしょうか。
ポイント
・チョコザップは2022年に事業を開始して現在で1000店舗を超える事業展開(2023/9/27現在)
・月額2980円(税別)という低価格を武器に既存のフィットネス事業と差別化。
・チョコザップはサービスのコンビニ化という新しいビジネスモデル。
・RAIZAPで蓄積されたノウハウが生きないとLTVが失速する可能性も。