こんにちは、長井 達也です。
今回は、”個室サウナ(小規模)開業ガイド!建築基準法・消防法・営業許可・経営について”です。
コロナの影響もあり、近場の娯楽施設として人気が高まっているのが”個室サウナ(別名 プライベートサウナ)”です。
サウナ自体は以前からありましたが、個室サウナは歴史が浅いビジネスモデルです。
そのため現在個室サウナの開業を考えている方は、
「サウナ運営で失敗しないために、どのような立地で、どのような顧客層をターゲットにすれば良いの?」
「営業許可は?個室サウナの価格設定はどうすれば良いの?」
など、悩まれている方も多いのではないでしょうか。
確かにサウナの収益性が不明であれば、開業に踏み切るのは難しいですよね。
そこで今回は既存の”個室サウナ”の料金体系などを調査した上で、開業時の損益分岐や収益性について考察します。
また新たに個室サウナを開業し経営されたい方にむけて、
- 個室サウナの開業に必要な資格・営業許可
- 個室サウナの開業に必要なスペック
- 個室サウナの運営方法
- バレルサウナの設置について
なども詳しく解説致します。
それではサウナ開業に向けて関連する法律など、一連の流れを確認していきましょう。


個室サウナ(ソロサウナ)の現状
これまでサウナと言えば、いわゆる「おじさん」が主要な顧客層でした。
ところが2019年7月に原田泰造さんが主役を演じるテレビドラマ「サ道」が放映開始された事が、サウナのターニングポイントになります。
「ととのう」や「サ活」などの言葉に代表される様に、マインドフルネスの一環として20代、30代の男性からもサウナが支持される様になりました。
一方、男性だけでなく女性でも美肌・美容目的としてサウナに注目する様になりました。
ところが 2019年12月初旬、中国の武漢市でコロナ患者が発生。
それ以降、多人数で入るサウナ(スーパー銭湯併設のスチームサウナなど)は営業自粛に追い込まれる事になります。
そこで誕生したのが、個室サウナ(ソロサウナ・プライベートサウナ)や、アウトドアブームの延長で生まれたテントサウナなどの小規模サウナです。
個室サウナ(ソロサウナ)は60分あたりの価格帯が3,000円~4000円程度と、これまでのサウナと比較すると高額な料金設定になります。
そのためラグジュアリーな内装とプライベート感を高める、会員制などを取り入れている個室サウナ店が多いのが特徴です。
個室サウナを開業するのに必要な資格・許可
個室サウナ(ソロサウナ)を開業する場合、必要となる資格・許可について解説します。
まず個室サウナの営業を開始するためには『公衆浴場法』に基づき、管轄する保健所の許可を得る必要があります。
さらに詳しく
公衆浴場には2種類あります。
・一般公衆浴場【普通公衆浴場】(いわゆる銭湯)
・特殊公衆浴場【その他の公衆浴場】(健康ランド、エステに付随する浴槽、サウナ、岩盤浴等)
また個室サウナの営業許可を取得するためには、公衆浴場法だけでなく地域の条例等も保健所に事前相談して確認が必要です。
なぜなら公衆浴場法に紐づいて、各都道府県や市町村が具体的な営業許可内容を条例等で定めているからです。
個室サウナ開業時の必要書類
・公衆浴場営業許可申請書
・構造設備の概要書
・確認済証の写し(工事完了後は検査済証の写し)
・消防法令適合通知書(消防署で手続きをします)
個室サウナの開業に 必要な資格・許可 | 届出先 | 費用 |
---|---|---|
公衆浴場営業許可申請 | 保健所 | 22,000円(神戸市の場合) |
個室サウナ(ソロサウナ)開業時:条例上の制限
個室サウナを開業する際、男女が1つの個室に入室して利用出来る店舗を営業するには条例の確認が必要です。
何故なら公衆浴場法に紐づく各市区町村の条例等では、混浴(家族風呂を除く)が許可されていないからです。
なお混浴に関して法律上、明確な定義はありませんが条例ではお風呂(浴槽)だけでなく、サウナも含めて規制している場合が多くあります。
実際、現在開業されている個室サウナの利用規約をいくつか確認したところ、その多くは同性のみでしか利用出来ない旨が記載されていました。
そのため資金力があるところは公衆浴場ではなく、個室サウナに特化したホテル(ラブホテル含む)で男女混浴を可能としているケースもあります。
混浴が緩和された事例
山梨県の条例では、スーパー銭湯等において入浴用の着衣を着て、サウナ、岩盤浴等で個室を設けていない特殊公衆浴場に限り、知事が公衆衛生上及び風紀上特に支障がないと認めた場合には、男女の混浴が許可されています。
個室サウナ(ソロサウナ)開業時:建築基準法上の制限
個室サウナを開業する際、建築基準法上の制限も確認しておく必要があります。
まず、サウナ(その他の浴場)などの公衆浴場は建築基準法上、特殊建築物(建基法第6条1項一号(別表第一)に掲げる用途)に分類されます。
”特殊建築物”とは映画館など不特定多数の方が多く集まる施設の事で、衛生上や防火上規制すべき建物になります。
また特殊建築物の内、床面積が200㎡を超える場合は用途変更をする前に確認申請(建築基準法に基づく手続き)が必要になります。
参考
用途変更とは、建物の使用用途を変更する際、建築基準法に基づき届け出が必要となる手続きを言います。
個室サウナ(ソロサウナ)開業時:用途地域の制限
個室サウナを開業する際、都市計画法などにより”用途地域”の制限がないかを確認する必要があります。
”用途地域”とは、特定の地域や地区における建築物や土地の利用目的を制限することを指します。
これにより、都市や地域の発展や公共の利益を考慮しながら、土地利用の調整や均衡を図ることが可能となります。
例えば、都市の真ん中に工場が建設されたりしない様に地域ごとに土地の”利用用途”が定められています。
日本では都市計画法に基づき、全部で13種類分類されおり、このルールに沿ったエリア、店舗面積を遵守する必要があります。
1. 第一種低層住居専用地域 | 低層の戸建てや集合住宅が建てられます。また、店舗や事務所を兼ねた住宅で、非住宅部分が50平方メートル以下かつ建築物の延べ床面積の2分の1未満のものも建てることができます。 |
---|---|
2. 第二種低層住居専用地域 | 低層住宅に加え、150平方メートル以下の小規模な専門店舗が建てられます。 |
3. 第一種中高層住居専用地域 | 低層住宅に加え、中高層の住宅も建てられます。住宅の他に、病院、大学や500平方メートル以下の店舗等も建てることもできます。 |
4. 第二種中高層住居専用地域 | 住宅に加え、1,500平方メートル以下の店舗、事務所等が建てられます。 |
5. 第一種住居地域 | 3,000平方メートル以下の店舗、事務所、ホテル等を建てることができますが、パチンコ店や大きな工場等は建てられません。 |
6. 第二種住居地域 | 1万平方メートル以下の店舗、事務所、パチンコ店、カラオケボックス等を建てることができます。 |

個室サウナ(ソロサウナ)開業時:消防法上の制限
個室サウナを開業する際、消防法上の制限を確認する必要があります。
公衆浴場のうち、サウナ(蒸気浴場、熱気浴場)などの業種は消防法上、特定用途の(9)項イ(特殊浴場等)に分類されます。
この特定用途の(9)項イに分類される業種が入居する区画は、”特定防火対象物”となり消防署に下記の書類提出が必要になります。
そのため設計プランの段階で消防署と事前協議を行い、必要な消火設備を整えて遵法性を確保する必要があります。
ポイント
・消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書(300㎡を超える場合)
・防火対象物使用開始届出書
・消防法令適合通知書交付申請書など
また消防法では、自分の店舗区画(賃貸の契約面積部分)とは別に、建物全体のテナント構成や階数、延床面積など複合的な要素から、必要となる消防設備の設備基準が変わります。
例えば、さまざまな用途で利用される建物(複合用途)に、サウナなどの特定用途の業種が入居した場合。
建物全体としてスプリンクラーの設置が必要になったり、消防設備基準が厳しくなる可能性があります。
そのためビル所有者である貸主は、建物全体の消防設備に多大な負担が必要となるため個室サウナを目的としたテナント入居を断る場合もあります。

個室サウナ(ソロサウナ)開業時:建物スペックの制限
貸店舗物件で個室サウナを開業する場合、事前に各種インフラのスペックを把握しておく必要があります。
電気系統
フィンランド式サウナヒーターを導入する場合、電気タイプのものであれば電気容量の確認が必要になります。
例えばサウナヒーター世界シェアNo1の ハルビア製(DELTA3)のもので、単相200V(50/60Hz)で、2.7KWとなります。
また電気タイプのサウナヒーターは、消費電力が家庭用のドライヤー2台分に相当になります。
そのため複数台個室サウナを設置する場合、屋上に変圧器(キュービクル)が設置されている様な建物でないと難しい場合があります。
また建物の各戸には規定の電気容量しか引込されていないため、ブレーカー容量の引き上げが必要になる場合もあります。
ガス・熱源
最近はオール電化の建物も増えており、ガスの引込がされていない場合があります。
また商業ビルなどでは賃貸借契約上、可燃物の持ち込みはNGとなる場合も多くあります。
そのためプロパンガスや薪タイプのヒーター設置は難しい貸店舗も多くあります。
予約システム&決済システム
個室サウナの予約システムとして自前で開発せずに既存のサービスを利用したい場合、下記の3つが候補として考えられます。
予約システム | STORES 予約![]() | Square予約 | 【MOSH】![]() |
初期費用 | 0円 | 0円 | 0円 |
月額費用 | 0円 | 0円 | 0円 |
決済手数料 | 4.9% + 99円 | 3.25% | 3.6%※1 |
予約件数 | 100件 | 無制限 | 無制限 |
備考欄 | ZOOM連携あり | 顧客管理に対応 | ZOOM連携あり |
これらはいずれも、予約と同時に決済まで出来るサービスになります。
なお個室サウナを無人で管理したい場合や、サブスク(月額課金機能)の料金体系を予定している場合は、【STORES 予約】がオススメです。
STORES 予約の特徴
STORES 予約ならスマートロック「RemoteLOCK(リモートロック)」 との連携により、完全非対面で、予約や決済が完了次第、施設入室時の解錠用暗証番号の受け渡しが実現できます。※月額利用料は約30,000円程度(スタンダードプラン26,378円+4,400円)掛かります。
個室サウナのビジネスモデル
今回、個室サウナを開業した場合の売上シュミュレーションを行ってみました。
出店内容
・貸店舗の賃料 坪1.5万円(30坪想定)
・内装設備費 坪60万円(個室7部屋)
・水光熱費 1来店100円
・平均客単価 3,500円
・平均月間来店数4回
・広告費は売上の10%
・全額カード売上
上記内容でシミュレーションした場合の結果は下記の通りです。

※実際の投資判断に当たっては、必ずご自身の責任において最終的に判断してください。
このシミュレーションを見ても分かる通り、LTV(生涯顧客価値)が高いモデル設計が重要になります。
そのため無人運営ではなく、会員制の個室サウナなどであれば顧客との関係性構築が重要になるのではないでしょうか。
また顧客数を維持するためにも、顧客獲得コストには十分投資すべきですよね。
これらを踏まえて必要となる開業資金を準備していきましょう。
※番外編 バレルサウナの設置について
問い合わせの多かったバレルサウナ(樽型サウナ)について、その設置方法や関係法律について解説致します。
バレルサウナの建築基準法について
まずタイヤ等があり牽引可能なバレルサウナの場合、建築基準法は適用されず、トレーラーハウス(起動装置を備えない車輌)と同じ分類になります。
しかしバレルサウナで牽引可能でも、下記に該当する場合は、建築基準法第2条第1号で定義されている「建築物」と判断されます。
○移動することに支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等があるもの。
○給排水、ガス、電気等の設備配線や配管等を接続する方式が、簡易な着脱式でないもの。
○規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況等から随時かつ任意に移動出来ないもの。
建設省住指発第170号
次にバレルサウナ(樽型サウナ)が建築基準法上の”建物”と判断された場合には、建築確認申請が必要です。

ただしバレルサウナ(樽型サウナ)の床面積が10平米以下の場合(既存の建築物と同じ敷地内に設置)、建築基準法第六条2に基づき建築確認申請は不要となります。
法的根拠(建築基準法第六条2)
前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
バレルサウナの消防法について
次に、バレルサウナ(樽型サウナ)に対する消防法の見解について解説します。
一般的にコンテナやトレーラーハウス等は、杭などで固定をしていなくても、設置をした段階で防火対象物として取り扱われます。 平成 25 年 1 月 1 日追加。
そのためバレルサウナも同様に、土地に設置した段階で防火対象物として考える事が自然かと思います。
また防火対象物である以上、特定用途の(9)項イ(特殊浴場等)に分類され必要となる消防設備を備える必要があります。
さらに防火対象物でサウナの営業を開始する際には、消防署に「防火対象物使用開始届」の提出が必要になります。
法的根拠:消防法の第2条第2項
防火対象物とは、山林又は舟車、船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属するものをいう
まとめ
以上、”個室サウナ(小規模)開業ガイド!建築基準法・消防法・営業許可”はいかがでしたか?
個室サウナを開業する際、一級建築士など有資格者が内装設計する限り、各種法律を詳しく把握しておく必要はありません。
しかし個室サウナを開業するために物件選びの段階で法律の制限上、出店可能かどうかの見極めは必要になります。
そのためにも最低限の法律知識は把握しておきましょう。
なお個室サウナ出店可否の目安としては、飲食(軽飲食以外)や美容室可能な物件であれば、ビルのスペック的に可能性が高いと言えます。
もちろん貸主の審査を経てはじめて契約可能となるため、具体的なビジネスプランをしっかり固めてから申し込みが大切です。
最後に、近年稀に見るサウナブームの盛り上がりではありますが、装置産業で減価償却が必要なビジネスモデルです。
このブームがどのような着地をするのかは、関係者も判断しかねるところです。
2023年のサウナ動向を見る限りグッドサウナさんや、ライフワークさんの様にコワーキングにサウナを併設するモデルがトレンドの1つになってきています。
つまり、それぞれが機能を補完する装置を用意する事が今後、サウナ経営の差別化になっていくのではないでしょうか。
ポイント
- 個室サウナは公衆浴場法の適用を受けて、規定の設備要件を満たす必要があります。
- 個室サウナは、消防法上、建築基準法の制限を受けます。
- 個室サウナは賃貸借契約上の制限を受ける場合があります。