こんにちは、私は長井達也です。
この記事では、「エステサロンの事業譲渡&転貸&廃業ガイド!原状回復費用も解説 」を紹介します。
コロナ禍以降に新規開業されたエステサロンも、2023年4月以降から滞納や解約予告の提出、解約など撤退の動きが活発化してきました。
そこでエステサロンの閉店・撤退を考えている経営者さんにとって、撤退に伴う「原状回復費用」について心配ではないでしょうか?
確かに、エステサロンを閉店すると多大なコストが発生するため注意深い経営判断を行わなければ以後の運営にも大きく影響を与えます。。
そこで今回はエステサロンを閉店する方法だけではなく、その他の選択肢として、
エステサロンを廃業せず、シェアサロンとして家賃収入を得る方法
エステサロンに内装譲渡金を設定して売却する方法
について、詳しく解説していきたいと思います。

エステサロンの撤退・閉店手順
まずはエステサロンを撤退・閉店する際の一般的な方法と注意点について整理しておきたいと思います。
ポイント
- 従業員への告知:
まずは従業員に閉店の決定を伝える必要があります。従業員には最低限必要な準備期間(転職など)を与え、可能な限り迅速かつ公正に解雇手続きを行うことが求められます。 - 顧客への告知:
次に、顧客にも閉店の決定を伝える必要があります。顧客には、閉店の日程や、返金や予約のキャンセルなどに関する情報を提供する必要があります。 - 行政機関への届出:
美容室を閉店する場合、保健所に「廃止届(廃業届)」を提出する必要があります。 - 債権者への通知:
債務(リース品を含む)を抱えている場合、債権者には閉店の決定を伝え、債務整理(リース品の引き上げなど)の手続きを進める必要があります。 - 在庫の処分:
化粧品などの店販商品だけでなく、備品類などの在庫があれば可能な限り迅速に処分する必要があります。 - 賃貸物件の解約:
賃貸物件に入っている場合、貸主に対して「解約通知書」を提出します。通常、解約予告期間(解約が可能になるまでの期間)が3~6ヶ月程度が設定されています。 - 賃貸物件の解体:
賃貸物件に入っている場合、解約日までに原状回復(通常はスケルトン返し【床・壁・天井が躯体むき出しの状態】)工事を借主負担で行います。
なお事務所仕様や住居仕様の物件をエステサロンに改装した場合は、スケルトンに戻した上で、それぞれ内装施工(原状回復)が必要です。
以上がエステサロンを閉店・撤退する際の一般的な流れとなります。
他にも広告媒体への掲載停止や、水道光熱関係、ネット関係など取引業者をリスト化して解約手続きを進めましょう。
なお原状回復(スケルトン状態に戻す)費用の目安は、解体費用や解体したものを廃棄する産廃費用として、1坪あたり3万円~3.5万円程度掛かります。
例えば20坪程度の物件なら、70万円前後の原状回復費用が発生します。

また原則、契約終了月は賃料の日割計算はされません。そのため解約を決意したら月末までに解約通知書を提出する様にしましょう。
エステサロンを第三者に転貸する方法
続いてエステサロンを撤退・閉店するのではなく、第三者に転貸(サブリース)する事でお店を存続させる方法について解説します。
貸主から物件を借りた借主が、第三者に貸し出す事を転貸・又貸し・サブリースなどと言います。
なおエステサロンを第三者に転貸(サブリース)する場合、2つのパターンがあります。
ポイント
・シェアサロンとして開業する
・第三者にお店全部を転貸する。
そこで、これらの相違点について表にまとめてみました。
転貸方法 | シェアサロン | お店全体を転貸 |
貸主承諾 | 必要 | 必要 |
依頼先 | スペースマーケット等 | 不動産会社 |
依頼時の費用 | 毎回売上の30~35% | 家賃の1ヶ月等 |
借主(転借人) | フリーランスの美容師 | 企業・個人事業主 |
保証会社審査 | 再審査&保証料発生 | 再審査&保証料発生 |
補足として、貸主の承諾がおりて譲渡できるとなっても、転貸する際には次の賃貸契約者が保証会社審査を通過する必要があります。
また、お店をまるごと第三者に転貸する場合、不動産会社さんにサブリースの賃貸借契約書を作成してもらう必要があります。
一方、既存のエステサロンをシェアサロンとして事業転換する場合、下記の課題があります。
シェアサロンへ転換する際の課題
・事業転換に伴い貸主の許可が必要
・フリーランス美容師の集客
そこでこれらの課題について、解決方法を記載します。
課題1:貸主の承諾
貸店舗を借りてエステサロンを開業された場合、まずは貸主さんにシェアサロンに事業転換したい旨を相談の上、承諾を得る必要があります。
なぜなら、一般的な賃貸借契約書には、下記の文言が入っているからです。
ココに注意
借主は貸主の承諾を得る事なく、本物件の全部又は一部について、賃借権を譲渡し、又は担保の用に供してはならない。
つまり貸主の許可なく、他人に転貸(第三者に又貸しする事)してはいけないと言う事になります。
これはシェアサロンが、賃貸借契約者とは違う方(=第三者)に貸し出すビジネスになるため、貸主の許可が必要になるという訳です。
なお貸主さんを如何に説得するかについては、下記の記事で詳しく紹介しているので参照下さい。
-
レンタルスペース開業ガイド!転貸(又貸し)の開業許可と法律知識
こんにちは、長井 達也です。 今回は、「レンタルスペース開業ガイド!転貸(又貸し)の開業許可と法律知識」について解説します。 最近、副業としてレンタルスペースやレンタルサロンを始める方が増えてきました ...
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課題2:施術者の集客
貸主さんを無事説得できたら、次はシェアサロンを利用してくれる施術者さんを集める必要があります。
もちろん、自分のホームページで募集を行うのも重要ですが、スピード感をもって集めるなら求人サイト(業務委託)に掲載するか、シェアスペースのポータルサイトに掲載するという方法があります。
シェアサロンなどを検索出来る事ができるポータルサイトとしては、スペースマーケット・インスタベースの2つが有名です。
スペースマーケット | instabase | |
スペース掲載数 | 22,000件 (2022年12月現在) | 23,000件 (2023年5月現在) |
支払い方法 | クレジット・コンビニ払い・銀行振込 | クレジット・コンビニ払い・銀行振込 |
これらに自分の美容室をシェアサロンとして登録してみるのも1つの方法です。
美容室を売却する方法
最後はエステサロンを撤退・閉店するのではなく、第三者に店舗を売却する方法について解説します。
美容室の店舗を売却するには、2つのパターンがあります。
ポイント
内装付き居抜き店舗として売却
店舗を含めたサロン事業を売却(M&A)
エステサロン売却方法の比較
エステサロンの店舗を売却を居抜き店舗として売却する場合、美容事業として売却する場合、それぞれの相違点について表にまとめてみました。
内装付き店舗として売却 | 美容室事業の売却 | |
依頼先 | 不動産会社 | M&A会社 |
美容室譲渡時の売却額 | 内装の残存価格程度+動産売買 | 営業利益×2~3年分 |
依頼時の費用 | 譲渡価格の10%前後 | 売り手側は無償の場合もある |
貸主承諾 | 必要 | 必要 |
保証会社審査 | 再審査&保証料発生 | 再審査&保証料発生 |
基本的な考え方として、赤字店舗の場合は不動産会社に居抜き店舗として賃貸仲介を依頼する事になります。
居抜き店舗の譲渡価格は、好立地なら言い値でも大丈夫ですが、すでに解約通知書を提出し解約予告期間が迫っている場合はディスカウントする必要があります。
黒字又は赤字でも従業員がいる場合は、M&Aして従業員ごと事業譲渡して欲しいという企業が現れる場合があるので、M&A会社に相談される事をオススメします。
大手だとデロイトトーマツなどがありますが、基本的には数千万円~億単位の高額な案件を取り扱うため、個人事業のサロンなら着手金0円で依頼できる【M&ADX】等に依頼されてはどうでしょうか。
賃貸借契約の変更について
内装付き居抜き店舗として売却する場合、または店舗を含めたサロン事業ごと売却する場合、いずれの場合でも賃貸借契約について見直しが必要です。
なお賃貸借契約については、名義変更(覚書)となるか、再契約(契約書のまき直し)で費用が大きく変わります。
名義変更とは現在の契約(原契約)を継承する方法、再契約とは現在の契約は一旦終了し事業の譲渡を受ける方が新規に賃貸借契約を行う方法です。
売却方法 | 名義変更(覚書対応)の場合 | 再契約の場合(契約書のまき直し) |
依頼先 | 管理会社または貸主 | 管理会社または貸主 |
家賃の保証会社 | 新規契約 | 新規契約 |
賃貸借契約について | 現在の契約を継承する。 保証金(敷金)等は継承される。 | 現在の契約は終了し新規契約する。 保証金(敷金)等は一旦精算される。 |
各種費用手数料 | ・不動産仲介手数料 原則不要 ・覚書作成料 発生する場合あり ・家賃保証会社費用 発生する ・内装譲渡仲介手数料 原則発生する(10%程度) | ・不動産仲介手数料 原則発生する。 ・覚書作成料 - ・家賃保証会社費用 発生する ・内装譲渡仲介手数料 - |

まとめ
以上、”エステサロンの事業譲渡&転貸&廃業ガイド!原状回復費用も解説 ”はいかがでしたか?
内装譲渡金を設定して、売却したい場合には契約時にお世話になった不動産会社さんに相談されるのがオススメです。
または居抜き専門の不動産業者さんなども都市部にはあるので、一度相談されてみても良いのではないでしょうか。
ポイント
・エステサロンの店舗を解約する際、原状回復費用等が掛かる。
・エステサロンの店舗を解約せず、転貸や譲渡をすれば原状回復費用は不要になる。