こんにちは、長井 達也です。
今回は、「テナント物件の賃料減額交渉術!家賃値下げ交渉の例文・雛形無料公開!」について解説致します。
経営上の課題から「固定費を削減したい」「キャッシュフローを改善したい」場合、家賃の減額交渉を行いたいという経営者の方も多いのではないでしょうか?
確かに、コロナが未だに尾を引く状況下で円安や材料原価の高騰をうけ、なかなか売上の回復目処が立たない業界や地域なども多く存在していますよね。
これまで販売促進や経費圧縮に取り組んできた方でも、外部要因に対しても積極的に取り組まないといけない状況もあると思います。
そこで家賃の減額交渉を行う上で重要となるのが、具体的な数字やデータをもとに交渉の土台を築くこと、そして貸主に対し現状の経営状況を正直に説明することです。
そのためには抽象的な要望ではなく具体的な提案を提示すること、そして相手の立場も考慮した柔軟な提案が重要です。
また、貸主側にも立場や事情があるため一方的な希望を伝えるのではなく、例え交渉結果が不調となった場合でもWin-Winの関係を築くことも忘れてはいけません。
今回は一時的な家賃の一部免除や期間限定の割引案を引き出す方法など、具体的なテナント家賃の減額交渉について解説したいと思います。
賃料減額交渉の前にすべき事
新型コロナウイルスの発生時には、多くのテナント物件で減額交渉が行われてきました。
しかしアフターコロナの今、貸主さんの立場からすれば、テナント家賃の減額交渉に応じたとしても具体的な補償を受けられるわけではありません。
そこでテナント物件を借りる側の事業主の皆さんは、まずは内部要因である売上アップや経費圧縮に取り組む姿勢を貸主にも説明する必要があります。
例えばテナント物件で貸主ではなく電力会社に直接電気代を支払っている場合、電力切り替えにより大きな削減効果が生まれるケースがありますよね。
また新型コロナウイルスに伴って売上悪化に関しては、日本政策金融公庫の低金利の融資制度もあります。まずはこれらの申請を急ぎましょう。
ただし、窓口が大変混み合っており融資実行には時間がかかります。
テナント家賃の減額交渉方法
まずテナント賃料の減額交渉については、物件を借りる時はもちろん契約した後でも”借地借家法32条1項”に基づき交渉を行う事は可能です。

恐らくテナント物件の契約時に交わした賃貸借契約書にも、下記の様な文言が記載されているはずです。
記載例
賃料が著しく不相当となったと甲が認めたときは、賃貸借期間中といえども甲は乙と協議のうえ賃料を改定することができる。
・土地建物に対する公租公課の増減
・土地または建物の価格の上昇または低下
・近傍同種の建物の賃料の変動
・物価の変動およびその他の経済事情の変動等を参考にする。
店舗を開業し安定的に利益を出していくには固定経費の削減が必須になります。
特に新型コロナウイルスなどに大幅な景気後退が予測される局面においては、固定経費の削減が重要です。
固定経費の代表格であるテナント物件の家賃の減額交渉が成功すれば損益分岐点も下がり、安定的な経営に近づける事が可能です。
ただし業種やお店の規模によっても家賃減額交渉の内容はマチマチです。
そこでまずはテナント物件の家賃交渉の内容として、どのような選択肢があるのか列挙してみます。
賃料交渉の選択肢
- 永続的なテナント賃料値下げ交渉をする。
- 期間を限定しテナント賃料の値下げ交渉をする。
- テナント賃料の一時的な支払い猶予を依頼する。
- 敷金(保証金)の一部をテナント賃料に充当依頼する。
正直、テナント側としては永続的な家賃の減額が望ましいと思います。
しかし貸主さんとしてはコロナウイルスを理由とした減額交渉の場合、当然収束に向かうタイミングがあると判断しますので、永続的な減額交渉には応じられないはずです。
そこでコロナウイルスの騒動に伴う売上減であるならば、期間を限定した賃料交渉を行うことが望ましいでしょう。
また今後2~3ヶ月は売上の目処が立たない状況だとおもいますので、まずは3ヶ月程度に限定して大幅な減額交渉をしてみてはどうでしょうか。
ただし、貸主は減額に応じる場合でも条件をつける場合があります。主な例として下記のようなものになります。
・例:早期解約した場合には、減額賃料相当額を違約金として支払う。
・例:4・5・6月の賃料を30%減額し7月以降の賃料に減額分を上乗せする。
今回に限っては目先の減額がまずは重要な局面です。
これらで一時的に資金的余裕をつくり、同時並行で助成金申請や融資の手配をおこなっていきましょう。
家賃交渉の減額可能額は?
通常テナント物件の家賃値下げ交渉を行いたい場合、近隣相場を確認する事から始めます。
しかし今回の新型コロナによる非常事態においては意味をなしません。
まずはテナント物件を契約をした不動産会社さんに、新型コロナの影響で売上が減少し減額交渉を考えている旨を伝え協力を依頼しましょう。
希望の賃料はお店を半年程度は継続できるだろう金額を具体的に伝えましょう。
家賃滞納中の減額交渉
新型コロナウイルスが広まる前からすでに家賃滞納している場合、賃料の値下げ交渉=退去が近いと判断されます。
リスクあるテナントは早く退店して欲しいと思われる場合もあります。
まずは融資や助成金などの手配からはじめて、家賃滞納を解消してから減額交渉に移るのが賢明かもしれません。
また貸主さんの多くは、物件を購入する際に銀行融資を受けて購入しています。
投資目的に物件を購入して所有している貸主さんの場合、ここ最近では5~10%前後の表面利回りになります。
つまり単純計算で、賃料を10%以上値引くと貸主さんは赤字になるという事です。
例えばテナント物件の賃料が10万円の店舗物件の場合、9万円以下まで家賃の減額交渉に応じた場合には赤字になってしまいます。
つまり現実的な家賃の交渉加減は10%程度ということになります。
反対に築10年を超える物件で、昔からその物件を所有している貸主さんの場合は高い利回りになっている場合があります。
すでに減価償却も終わり建物を建設した時に銀行から借りた融資返済が終わっているからです。
言い方を変えると入ってくるお金はすべて利益です。その様な場合には、賃料の値下げ交渉の幅も広がる傾向にあります。
そのような物件では、賃料を1~3ヶ月程度の期間を限定し30~40%以上減額する事例、1ヶ月だけ賃料を免除するといった事例もある様です。
家賃値下げ交渉の文書作成
不動産会社さんに家賃の減額交渉を依頼する場合、すでに新型コロナウイルスの影響で減額交渉が殺到している状態です。
手を煩わせないためにも、減額交渉の願い書を作成して手渡せば家賃交渉もスムーズに始まります。
そこで新型コロナウイルスに伴うテナント物件の家賃値下交渉の文書例を作成してみました。
時候の挨拶はこちらをご参照下さい。
コロナに伴う家賃交渉の文書例1
令和2年○月○日
[貸主名]様
[借主法人OR屋号名]
[借主代表者名]
新型コロナウイルスに伴う賃料減額の願書
拝啓、 早春の候、[貸主名]様におかれましては、ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
また日頃は[物件住所・物件名・階数]に出店させて頂いている弊社店舗[屋号]の運営にご理解を賜り厚く御礼申し上げます。
この度、このような書面を提出させて頂くのは大変心苦しいのですが、[貸主名]様のご理解を賜りたく、お願いを申し上げます。
[賃貸借開始日]よりお借りさせて頂いております私どもの店舗では、新型コロナの影響をうけ運営が非常に厳しい状況でございます。
もちろん店舗の収益の改善を図るための経費削減・取引業者様との値段交渉等を試み、精一杯の運営を行っておりますが今後も安定経営を行うには固定経費の削減が必要です。
誠に勝手なお願いであることは重々承知しているのですが、[貸主名]様より賃借しております弊社店舗「○○」 につきまして、是非とも賃料の改定を致したくお願いしたく、書面を提出致します。ただ勝手なお願いでございますので、金額や減額期間等々の諸条件について、 [貸主名]様で可能な範囲をご検討頂ければ幸いです。
(現行賃料)
賃料 ○○○円(税別)
共益費 ○○○円(税別)
合計月額賃料 ○○○円(税別)
(改定希望賃料)
賃料 ○○○円(税別)
共益費 ○○○円(税別)
合計月額賃料 ○○○円(税別)
何卒、ご理解とご承認を賜りますようお願い申し上げます。
敬具
家賃減額交渉願のWORDデータもご用意しました。
つづいて、新型コロナウイルスに伴うテナント物件の家賃値下交渉の文書例2パターン目です。
コロナに伴う家賃交渉の文書例2
令和2年○月○日
[貸主名] 御中
[借主住所]
[借主法人OR屋号名]
[借主代表者名]
「新型コロナウイルス感染症」伴う期間限定の賃料減額についてのお願い
拝啓、早春の候、[貸主名]様におかれましては、ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
また日頃は[物件住所・物件名・階数]に出店させて頂いている弊社店舗[屋号]の運営にご理解を賜り厚く御礼申し上げます。
このたび書面を提出させていただくことは大変心著しいのですが、こ理解を賜りたくお願いを申し上げます。
報道等によりすでにご承知おきかとは存じますが、新型コロナウイルスの感染拡大により多くの店舗で通常営業ができない状況です。
私どもの店舗も例外ではなく○月○日より(営業自粛・短縮)をいたしておりまして、来客数、売上の大幅な減少に見われて今後の店舗運営に与える影響は計り知れません。
また、新型コロナウイルスの影響が長期化してしまうようであれば店舗存続の危機も免れません。
もちろんこの事態を乗り切ろうと精一杯手配を尽くしておりますが、中々厳しい状況で御座います。
そこで誠に勝手な考えでは御座いますが、新型コロナウイルス感染症の影響による売上滅少を考慮し、○月・○月分について、現在の賃料○○○円(税別)を○○%減額した○○○円(税別)に減額頂ければ、厳しいながらも運営を継続する事が可能かと存じております。
私どもとしましては、皆様の支援を無にすること無きよう、尽力させていただく所存で御座います。
何卒、ご理解とご承認を賜りますようにお願い申し上げます。
敬具
家賃減額交渉願のWORDデータもご用意しました。
家賃減額交渉の相手別対策
テナント物件の家賃値下げ交渉を行う場合、値下げ交渉が成功するかどうかは貸主さんにとって家賃交渉に応じるメリットが有るかどうかに掛かっています。
貸主さんが家賃交渉に応じるメリットなんてあるの?て思いますよね。
しかし貸主さんには現在のテナントに解約されると困る理由が複数あります。
貸主の交渉理由
- 不動産会社に1ヶ月分の仲介手数料を支払う必要がある。
- 不人気物件は、広告費として家賃の2~3ヶ月分を支払う場合がある。
- 空室になれば何か月も賃料が入ってこないリスクがある。
- 売却予定の物件だと空室になると売却額に影響がある。
つまり貸主さんにとって望ましい状況とは、同じテナントさんに出来るだけ長期で店舗を借りてもらった方が無駄な経費が発生せず、利益が得られると言う事です。
そこで貸主さんは解約を受け入れるか、家賃交渉に応じた方が得になるのかを天秤にかけて判断する事になるため、テナント物件の家賃値下交渉が可能となる場合があります。
なお1番大切なのは、家賃の値下げ交渉を行う事によって貸主さんへの心証を害さないという事が大切です。
テナント物件の家賃交渉をするだけならタダではなく、貸主さんとの良好関係を維持していく事も安定経営には重要です。
また貸主さんといっても個人の場合、法人の場合、法人の中でも不動産ファンドの場合など様々です。そこで家賃の減額交渉を属性別アドバイスします。
不動産ファンドが家賃の交渉先の場合
テナント物件の貸主さんが不動産ファンドという場合があります。
この場合、月々の利益回収を重要視している可能性が高いので契約中の値下げ交渉は非常に難しいケースが多いと言えます。
契約時の交渉においては、毎月のランニング費用ではなく初期費用や内装費用負担、フリーレントなどであれば柔軟に交渉に応じてくれる傾向にあります。
他にも近い将来売却が目的の貸主さんも多いので退店リスクを考慮して現状渡しの現状返し(入居時に綺麗にしなくていいから、退去時はそのまま出ていくよ)という交渉も検討してみてはどうでしょうか。
ただし、今回のようにコロナウイルスの影響で市場環境が悪化した場合にはファンドという性質上、減額交渉は厳しくなります。
家賃減額よりは一時的な家賃支払い猶予など、資金がショートしない施策をメインに交渉する事がおすすめです。
管理会社が家賃の交渉先の場合
テナント物件の家賃値下げ交渉の相手が貸主ではなく、管理会社が出てくるケースがあります。
管理会社にとって、テナント物件の家賃値下げ交渉は何の報酬にもならない後ろ向きな仕事のため、通常は非協力的です。
むしろ現在のテナントが解約して、そこに新しいテナントが入居してくれたら仲介手数料も入ります。
ですから家賃交渉の相手が管理会社の場合には日頃の関係性が重要です。
しかし今回のようにコロナウイルスの影響で市場環境が悪化した場合、管理会社としてはテナント数が極端に減ることは避けたいのは事実です。
なぜならテナントビルを管理する会社の多くは、毎月の回収賃料に対して3~5%程度の報酬を得ているからです。
そこでまずは、1~3ヶ月程度おもいきった減額交渉をしてみてはどうでしょうか。
※ 家賃値下げコンサルティングを使う場合
家賃の値下げ交渉を行う場合、賃料減額を専門とする会社に値下げ交渉を丸投げしてしまうと言うのも1つの手です。
しかしあなたが貸主さんと直接対話するのではなく交渉人を使うと言う場合、貸主さんとの関係に問題が生じるケースもあります。
そこで下記のような条件に限り値下げ交渉の会社を使われる事をおススメします。
1、貸主さんは、法人の貸主でありこれまでビジネスライクな関係である。
2、貸主さんは、情緒が通じない相手である。
3、近隣相場と比べて明らかに賃料が高い状態であり、あなたが退去する事で貸主さんとしては困る場合
反対に個人の貸主さんの場合は、あなたの人柄などに対して情緒的な判断で便宜を図ってくれるケースもあり日頃の人間関係が値下げ交渉時にモノを言います。
ですからそのような場合に賃料減額を専門とする会社に依頼するのは得策ではありません。
次に定期借家契約で入居した店舗物件で減額交渉を希望する場合。
この場合、将来的にビルの建て替えなどを想定しているケースも多く値下げ交渉に応じるどころか早く退去してほしいという思惑が強い場合が有ります。
ほかにも頻繁に貸主さんが変わる物件。こういった物件は貸主さん(=売り主)は出来るだけ利回りの良い状態でテナントビルを売却したいと考えています。
ですから値下げ交渉に応じるケースは稀です。
また利回りが重要なので家賃の値下げという手法ではなく、敷金の一部を家賃に充当してもらうなどの方法であれば検討可能な場合もあります。
まとめ
以上、”テナント物件の賃料減額交渉術!家賃値下げ交渉の例文・雛形無料公開!”はいかがでしたか?
まず肝に銘じておかないといけないのは、賃料交渉は手段であって目的ではありません。
事業継続を行うため、賃料交渉は手段の1つでしかありません。
貸主側もそこはよくチェックしており、事業継続の本気度がわからないと交渉には応じにくいですよね。
そこで基本的には、家賃の減額交渉・資金調達(融資・助成金)、リストラ(経費圧縮)の3つセットで行動することが大切になります。
賃料減額交渉のみに拘れば、事業継続自体は失敗に終わるリスクが高まりるため注意しましょう。
ポイント
- 2020/3/31に国土交通省は、コロナの影響を受け家賃減額交渉に関し柔軟に対応するように要請。
- 家賃減額が目的ではなく資金ショートしない事が目的。そのために資金調達・リストラも必要。
- コロナによる家賃交渉の現実的な金額は1ヶ月10%程度(✕3ヶ月)が目安。
- テナント物件の家賃値下げ交渉は、交渉するだけならタダではない。これからの心象も左右する。
- テナント物件の家賃交渉は、永続的・期間限定・支払猶予・保証金相殺の4つの方法がある。